Ohkawa lab.

Project

 

研究プロジェクト1 クロマチンコードの解明

クロマチンコードとは?: 遺伝子の位置、あるいはその発現時期、発現量を規定する固有のクロマチン構造

クロマチンコードを形成するヒストンの網羅的同定のその機能解析

DNAとヒストンの複合体であるヌクレオソームは、ヒストン修飾の付加やヒストンバリアントの取り込みによる動的な構造変換がなされ、タンパク質のDNAへのアクセスを規定し、分化や発生の局面に応じた遺伝子の選択的発現を規定している。一方で、選択されるヒストンは、複数の種類が存在が示唆されてきたがその全貌が明らかではなかった。我々は、最近、コンピュータを用いた未知ヒストンバリアント遺伝子の網羅的探索と通常手法では困難であったヒストン遺伝子の発現定量法を樹立し、マウスゲノムに存在する未知のヒストンH3様のバリアント遺伝子を14種同定した(Maehara & Harada et. al., 2015)。これら未知ヒストンバリアントは、種特異的、あるいは組織特異的な発現パターン示しており種の固有性、あるいは組織特異性を定義する新たなクロマチンコード発見につながることが期待される。現在、様々な動物種で未知ヒストンバリアント遺伝子の同定と機能解析を行っている。

コードを認識する分子の機能解析

クロマチンコードは、コードが特定の分子により認識され、クロマチン構造上で転写、あるいは別のクロマチンコードに転換されることで機能する。例えば、SWI/SNFファミリーはH4K16acを認識して(ヒストンコードの認識)、RNAポリメラーゼIIが結合可能な領域形成を行う。すなわち、コードを明らかにするだけではなく、コードを認識する分子を同定して初めて特定のクロマチンコードの解明が可能となる。現在、ヒストンコード(ヒストン修飾)、ヒストンバーコード(ヒストンの種類、ヒストンバリアント)を認識し作用する分子の同定とその機能解析を進めている。特に、ATP依存的なクロマチンリモデリング酵素分子(SWI/SNFファミリー)に着目して解析を進めている。SWI/SNFファミリーはクロマチン構造を再構成し転写制御を行う。現在解析を行っているのはSWI/SNFのサブファミリーであるChdファミリーである。これまでに我々はChd2が転写因子やヒストンバリアントH3.3と結合し、転写制御を行うことで、骨格筋分化を制御することを明らかにしてきた(Harada et al, 2012)。現在もChd5(Hayashi et al, 2016)をはじめとした機能未知のクロマチン制御因子の機能解析を進めている。

研究プロジェクト2 未知のクロマチンコードの抽出とその理解のための数理モデルの確立

ヒストンコード(ヒストン修飾)やヒストンバリアント(ヒストンバーコード)のようなクロマチンコードは、現在解析が進んでいる。コードを規定するヒストンの状態が特定のアミノ酸配列や化学修飾のように分子としての対応が明らかなためである。一方で、クロマチンコードには、ヒストン修飾やヒストンバリアントの組み合わせで特徴的な空間(局所的構造)が定義されるパターンが存在することが示唆されてきた。いわば、形が規定する機能と言える。我々は、まず最も基本的な形であるヌクレオソームの配置に注目した。ヌクレオソームは転写活性化に伴って転写開始点に特徴的なの配置パターンが形成される。そこで様々な転写因子結合位置等ゲノムのあらゆる場所でどのような配置パターンを形成しているか明らかにすることとした。そこでまず、高解像度なヌクレオソーム配置の情報を得るため、モノヌクレオソームサイズに特化したMNase-Seq法を確立を行った。あらゆる転写因子結合配列周囲に形成されるヌクレオソーム配置情報をゲノムワイドに収集し、主成分やリッジ回帰分析を利用した情報解析手法を用いて機能的な配置パターン抽出を行った結果、転写活性化に関わるヌクレオソーム配置の分布形状は、5つのヌクレオソーム配置パターンにより主に構成されていることが明らかとなった(Maehara & Ohkawa, 2016, Sci. Rep.)。この研究のなかで開発したChIP-seqの情報解析ソフトウェアは一般に公開し、共同研究でも成果を挙げた(Hayashi-Tanaka, 2015)。引き続き、ヌクレオソームを構成する(我々の同定した新規同定バリアントを含む)ヒストンバリアントやヒストン修飾、再構成ヌクレオソームを用いた高解像度なDNAメチル化が及ぼすヌクレオソーム配置の高解像度な解析手法の開発(Osakabe et. al, Open Biol., 2015)を通し、局所的なヌクレオソームの空間パターン形成が担う転写制御機構の解明を目指し研究を行っている。

ビックデータ解析技術

High Performance Computing(HPC)は医学生物分野の研究者にとっても欠かすことのできない重要な計算環境である。本研究室では、研究員、大学院生にUnix/Linux環境を提供し、バイオインフォマティクス、統計の知識、スキルを習得後、自分のプロジェクトは自分でWetからDryまで一貫して行っている。こうした知識とスキルを研究活動の一環として身に着けることは、医学生物学分野のみならず様々な分野で活躍できる力になると考えている。特に圧倒的な計算資源を提供している国内スーパーコンピューター拠点を積極的に活用している。

現在以下のスーパーコンピューターを当研究室では利用させていただいております。

九州大学情報基盤研究開発センター tatara,hakozaki,hayaka, mikasa, の4つのスパコンがあります。 (1)tatara PRIMERGY RX200S3 Intel Xeon 3.0 GHz ×2 4 core /node Mem:8GB/node (2)sugoka PRIMERGY RX200S6 Intel Xeon X5670 2.93GHz 12 core/node Mem:48GB/node

研究プロジェクト3 新規トランスクリプトミクス解析技術の開発

当研究室では、トランスオミクス医学研究センターの一角としてゲノムからトランスクリプトミクスを繋ぐ新規解析技術の開発を進めている。特に、様々なクロマチンコードを解析する上で、各コードやコード認識する分子を可視化、あるいは分画する抗体が大量に必要となる。そこで、モノクローナル抗体作成を行うことで大量かつ安定的に抗体確保を進めている(大阪市立大学立花研究室・重井医学研究所との共同研究)。また、より効率的な抗体作成技術樹立のためハイブリドーマ技術の開発も行っている。